5時に寝るつもりだったのによ!!
不良!!ゴミ!!不細工!カッコつけ野郎!意気地なし・・・バカぁ・・・
足臭ピュアホのばか
ってかなんでそんなに起きてるんだよwwww
寝なさいな
あと前も気になったんだけど
会社じゃないとネットが見られない環境、とか?
これ気になるからちょっとどういうことか教えてくださいな
またあとで投下するー
百年に一度の祭は山神祭という名前があるらしく、村人にとって生涯一のイベントらしい
それだけ重要視される理由の一つはもちろん生贄だ
生贄を捧げなければ村に厄災が降りかかり滅んでしまう
命が懸かっているのだから真剣にもなるだろう
もう一つは単純なことで、百年に一度だから
百年に一度ともなれば経験できずに死んでいく人もいる
老人も俺ぐらいの子も小さい子も山神祭に立ち会えて喜んでいた
人が死ぬことをどう受け入れてるのか、喜んでいた
山神祭は村の集会所がある敷地で行われた
中心にやぐらを組んで中で太鼓を叩き、周りを囲む簡易的な畳の床に座り食事や酒を楽しんでいる
村人が全員集まっているということだったが、規模が大きいとは思わなかった
だけど今からここで人が死ぬなんて想像できない
そんな和やかな雰囲気なのに、一つだけ異色の道具が際立っている
たった一つしかないのに祭の全貌を解き明かすような道具がやぐらの下で笑っている
組まれた高台の上に乗せられた映画や漫画でしか見たことがない処刑器具
ギロチン台
大きな刃を備えたあれだ
知っているからイメージが浮かんでしまう
あのギロチン台に首を突っ込んで彼女は首を落とされるのだろう
高台から零れおちた彼女の首がころころと地面を転がって世界を二転三転見回って
婆が拾うのだろうか。黒服が拾うのだろうか
どばどばと滝のように血が流れて高台は赤く染まる
受け皿が用意されていてそこに血を溜めるかもしれない。壺かもしれない
なんにせよ彼女の上等な血液は山神という空想の神を鎮めるために使用される
「おはようございます」
袖を二度ほど引っ張られて彼女が後ろにいたことに気づく
振り返ってみると彼女の姿は真っ白だった
白装束だ
対して俺は黒い和服を着ている
この服を着ていれば屋敷の関係者とみなされて村人からの目を誤魔化せるからということだ
「おはよ」
「どうします? まだ時間はたっぷりありますが」
「そうだな……なにかやりたいことってある?」
聞いてみるも山神祭には屋台が出ていない
屋台に回る人員がいないんだろう
皆が食べているのは家から持ち寄ってきたものらしき煮物やらなにやらだ
「やりたいことを沢山経験した十日間でしたからね。
私は満足していますよ」
「この程度で満足するなよ。まだまだ知らないことだらけなんだから」
「いえいえ、何事も腹八分目と言いますから」
「……そっか。そうだな」
諦めの悪い俺の言葉が萎縮していく
少しの沈黙
静かな空気が流れた
いつもの雰囲気だ、特別おかしなことじゃない
だってのに気が重苦しい
いつも以上の無力感が重苦しい
「そうだ、お酒を飲みましょう」
というわけで村人の所へ近寄っていく
俺と彼女が近寄るなり村人達は一斉に正座した
畳の上だろうが地面の上だろうがお構いなしに正座をして、彼女が通るより先に頭を地面につける
賑やかだった集会所が途端に静まってしまって彼女は表情を暗くした
彼女が外の色々な知識を得ていく中で産まれ育った村との違いを知った時、一番悲しんでいたのがこのことだった
彼女はどんな場所にも自分と同じ境遇の人がいるのだろうと考えていたようだけど、実際はそうじゃない
多くて一国に一つ程度でありふれた称号じゃない
村の中で誰とも話すことができなかった彼女はそれが仕方なのないことだと考えていたらしい
「でも本当は、誰とだって仲良くできたんですね」
その呟きは同時に彼女がしきたりに疑問を抱いた瞬間だった気がする
屋敷の者に敬意を払わなければならないというしきたりに意味があるのだろうか
一つのしきたりが間違っているとしたら、全てのしきたりは本当に正しいのだろうか
彼女の中でどんな結論になったのかは知らないけど
「コップをどうぞ。おつぎしますよ」
「この状況で酒をつがれるのか。恐い恐い」
言いながら、俺は彼女にコップを差しだす
なんとなくだが村人からの視線が強まった気がした
だったらお前ら彼女に酒をつげよって感じだが、身分から違う彼女と村人は視線が合うことすら許されない
「ありがと、いただくわ」
つがれた日本酒をぐいと傾けて喉を潤す
さらりと流れるように融ける味わいに自然と息が漏れた
「屋敷の人間につがれた酒は美味いなあ」
割と大きな声で響かせる
「味に違いなどありませんよ」
くすっと彼女が微笑んだので、俺も笑い返した
これはただの嫌味だ
なんだったら彼女に酒をついでやれっての
彼女と酒を飲み比べたことがあるんだが、もちろん彼女の方が先に潰れた
酒という存在は知っていたが家政婦にも黒服にも酒は駄目だと言われていたとのことで、俺が無理に誘ったんだっけな
街のBARに行って甘くて飲みやすいカクテルを注文して彼女に飲ませる
初めて飲むアルコール(といっても微量)にたちまち紅潮した彼女は目を細めてくねっくねっと首を回した
「なんだかぽかぽかしますね」
それから十五分後には顔を真っ青にしていたけどな
「飲み過ぎるなよ。酔いつぶれても責任取れんぞ」
そんな経緯があるのでほどほどにと忠告した
すると彼女は俺がついだ日本酒を一気に飲み干して、小さく息を吐いていく
「おいおい」
「大丈夫ですよ、今日は酔う気がしませんから」
「でもそれでやめとけ」
「……ケチ」
頬を膨らませて彼女が拗ねた。いかん、可愛い
可愛すぎるなこれどうする? 拉致る?
冗談ではなく、一度は拉致しようと考えたこともある
今日という日に彼女を監禁して、祭に出席させない
必然的に彼女は生贄にならない
その痛みを彼女は一生、死ぬまで悔やむのが目に浮かぶ
彼女は俺を恨むだろう
どうして私を生かしたんですか?
それでも平然と俺の我侭でって答えられるほど、神経が図太ければよかったんだけどな
「こら」
「……ケチ」
こっそり酒を飲もうとしていた彼女は口をすぼめて残念がった
この間、村人はずっと頭を下げていた
山神祭がいよいよ始まった
午後一時から始まる山神祭だが仰々しいイベントはない
始業の太鼓が打たれ、開会の言を送られる
太鼓のリズムに合わせて笛が吹かれて祭の様相を彩っていた
彼女は屋敷の人間であり今回の主役なので、赤い絨毯に豪華な椅子が置かれた場所に座っている
同じ絨毯の上には屋敷の婆も座っていて、隣には黒服が立っていた
俺は彼女の隣で立っていた
「ふふっ」
「どうした?」
「嬉しいんです。この村がこんなに楽しそうなのは初めて見ますから」
やぐらの周りを囲むように、回りながらゆらりと踊る村人達
彼女は輪に入って混ざりたいだろう
だけどそれは許されない
もう祭は始まってしまったし、彼女が混ざれば輪は崩れる
「俺と一緒に踊るか?」
「ふふ、踊れないんじゃないですか?」
「そ、そっちこそ踊れないだろ?」
「一応は踊れますよ?」
「なんでそういうことはもっと早く言わないんだよ……見たかったのに」
「またどこかで会った時に踊りましょうか」
またどこかで彼女と会うことができるならそこはどこだ?
天国か? それとも来世か? はたまた宇宙のなんたらか?
会えるならどこでもいいんだけどな
いやでも、そしたら再開一番踊ることになるのか
いくらなんでもシュールじゃね?
祭を眺めていると唐突に肩を叩かれる
振り返ると黒服がいて、顎をくいっと動かしていたから喉を撫でてやった
「ふざけるな、来い」
「最初っからそう言えばいいだろ。ったく」
黒服に付いていき敷地を出て外で対峙する
機嫌はとにかく悪そうだ。それもそうだ、俺はこいつの期待に添えなかった
「貴様は結局なにもできなかったな」
「……だな」
認めると、黒服は珍しく大きな溜息を吐いた
「冗談だ。なにもできなかったということはない」
「だといいけど」
「貴様のお陰でお嬢様はよく笑うようになった。
その楽しみをお嬢様に知ってもらえて良かった。
俺には貴様よりもなにもできなかったからな」
「出会い方の問題だろ、そんなもんは」
村で育って会ってしまったから黒服は彼女に認識されない
一人の男ではなく村人として見られるだけだ
見てるからな!
「お前が海で女の子をナンパするって図は想像できんけどさ」
「貴様にできて俺にできないことはないだろう」
なんでいきなり張り合ってきてんだよってか顔近いっての
「わかったわかったお前にもできるよ、そら、ナンパしてこい」
「こんな小さな村でナンパをしたら後がややこしい」
「じゃあ今度やれよ、絶対な」
黒服は聞こえないフリをしてそっぽを向く
嫌なんじゃねえか、ずるいやつだ
「で、なんだよ呼び出して。用があったんだろ?」
「……もういい」
黒服はそのまま婆の横に戻ってしまった
なんだったんだ今の雑談
仕方がないので俺も彼女の隣に戻る
彼女にどうしました? と聞かれても、さあとしか答えられなかった
飲んで歌って騒いで踊って一時間
とても祭らしい祭が続いていたが、太鼓の強打が連続されて終わりを匂わせて曲が止まる
空を叩くような音の連なりが腹に響く
和やかな雰囲気が一変して緊張した
「>>1さん」
「……」
「見ていてくださいね」
「……ああ」
彼女が立ち上がる
婆も立ち上がった
俺はこれから理解する
彼女が生贄になるということを理解する
既に飲み込めない感情が涙を一筋流していた
後悔と無力感が満ちて悔しさのあまり吐き気がする
その全てを押さえ込む
それが彼女を理解するということだ
受け入れられないなら我慢するしかない
拳を握り過ぎて爪が刺さることも
歯が壊れそうなほどに軋むことも
彼女を理解する一分に過ぎない
「ありがとう、さようなら」
そう言う俺に彼女は振り返り笑ってくれた
「ありがとうございました、さようなら」
全てが終わる
終わるんだな
婆が声を張り上げて村人の注目を集めた
ラストまで行けるかなーと思ったんだけど無理だった
ではおやすみ!
待ってる