「ここだ」
黒服に連れられて彼女の部屋の前まで来た
しかし時刻は七時を過ぎていて辺りは真っ暗、月が綺麗に満ちている
これってもしかしなくても夜這いじゃね?
そう考えると途端に気恥ずかしくなってしまいもじもじしてしまう
そんな俺がよほど鬱陶しかったのか黒服が頭を叩いてきた
なんだこいつ、急に馴れ馴れしいな
敬語を止めた俺に言われたくないだろうけどさ
いつまでも足踏みしているわけにもいかないので深呼吸して覚悟を煽る
「こんばんわ」
挨拶と同時に襖を開ける
そこには着替え絵中の彼女が、とかそんなことはなく、普通に座っていた
相変わらず物のない部屋で、座布団に正座して姿勢正しく本を読んでいた彼女は、俺を見て次に黒服を見た
「どういうこと?」
黒服を責める口調が遠まわしに俺へ突き刺さる
容赦ない"さっさと害虫駆除しろよ"的な視線が恐いが流石に俺の被害妄想だよな
「久しぶる」
……何語だよ
なんでここで噛んだのか
しかも彼女にウケてない
想像以上に彼女は冷たかった
いつの間にか横から姿を消した黒服
気づけば二人きりとなっていたので「入っていい?」と聞いたら「嫌です」とはっきり断られた
一瞬気が遠くなる
決意固めて黒服に殴られまくってそれでも踏ん張った主柱がぽきっといい音で折れそうだ
「じゃあここでいいや、話を聞いてほしい」
「お好きにどうぞ」
本気で怒っている彼女には恐ろしさがあった
二十代の怒りとは毛色の違う恐ろしさ……いっそホラー的な要素が近い
「不良って知ってる?」
ぴくりと彼女の耳が動く
どうやら初めて聞くらしい単語に正直な心が揺れたようだった
しかし彼女の想いも固まってしまっているのか、特に返事はない
構わず俺は話し続けた
「この村でいうとしきたりだな。外の世界でのしきたりを守らない人、そいつらを不良って呼ぶんだわ。
不良品、出来損ない、クズ、ゴミ。代名詞は山ほどあるな。
で、俺も不良だったんだ、ずっと」
「ツレと馬鹿やってるだけで楽しかったから、周りのことなんて気にもせずに悪いことばかりしていた。
人に迷惑をかけて、人を笑って生きていた。
本当に最低だったろうし、最悪だろうし、だから不良品と呼ばれるんだろう。
大人になると多くの人は間違いに気づく。中には気づけない奴もいるんだけどな。
俺は運良く、気づけた方だった」
「そのことに気づいた途端に恥ずかしくなった。
自分が不良であることが、恥晒しだったことが恥ずかしくなった。
謝りたくても当時迷惑をかけた人の大半がどこにいるかなんて解らない。
すれ違う人、道行く人に迷惑をかけてたんだから当たり前だ。余計に後悔が重なった。
だから俺は自分の過去を誇れないし、貴方に話さず接してきた」
「けど違ったんだな。
不良だった過去は恥ずかしいことだし後悔すべきことだけど、全部を全部否定しちゃダメなんだな。
不良だったから出会えた友達がいる。
たった一つでも良いことがあったなら目を背けちゃ駄目だ。
だから全てを話すべきだってわけでもないんだけど、貴方に嘘をつくのが嫌になった」
「俺、色々嘘を吐いてたんだ、ごめん」
彼女は本に視線を落としたまま口を開かないが、細い指は次のページを追うことなく止まっていた
「カメラ、今日も持ってきてるけどさ、貴方に合う前の俺は写真なんて全然好きじゃなかったんだ。
写真なんて撮ったこともなかった」
「あとはやっぱり真面目なフリをしてた。
本当は真面目な性格でもないくせに、必死に取り繕ってた。
だからずっと敬語だった。本当は敬語なんて、他人だからって使い続けるような奴でもないんだけどな」
「でも一番は、生贄のこと。
受け入れた風を装ってごめん。
理解者ぶってごめん。
俺はなんも理解してなかったし、そもそもする気がなかった。
したくないと言えば今でもそうだ」
「好きだから、ずっと一緒にいたいって思うんだ」
「だから、ほんと、色々嘘をついててごめん。
俺、本当はこんな感じの駄目野郎なんだ」
深く頭を下げて気持ちを込めた
土下座なんてしたことはないが、土下座よりよっぽど誠実に謝れた気がする
伝わったのか彼女から返事はあった
「謝りに来たのですか?」
決して暖かい言葉とは言えなかったが、まあいい
せめて言いたいことは言わなければならない
頭が悪いくせに賢ぶってても仕方ないだろ?
馬鹿は馬鹿なりに動くべきだ
「違う。俺は誘いに来たんだ。
生贄になる日まで後十日ある。
その間、色んなことして遊ぼうってな。
ほら、あれだ、知らないか?
○○さん、あーそーぼーってやつ」
言ってから羞恥が湧いてきて顔を見られまいと俯いた
ってかなにをペラペラと俺は喋りまくってんだそんなキャラじゃねえだろって後悔してももう遅い
それに、口にしなければ伝わらない
だからってあーそーぼーって気持ち悪いだろいくつだよ一人で遊んでろよ
ってな風に自分を恥じていたら彼女の反応を聞き逃していた
気づいたのは何度目かの「あの」という呼び声だった
「は、はい?」
名残りで敬語が出たが喉を鳴らして誤魔化し「ん?」と聞き直した
すると彼女は俺の袖をくいくいっと引っ張って、言った
「なんて返したらいいんですか?
阿と呼んだら吽と答える、みたいなものなんですよね?」
好奇心いっぱいの表情で笑っていた
彼女らしい笑顔に対して、俺は上手く教えることができなかった
言い出しといてなんだけど、そんな可愛っけのある誘い方したことないんだって
「えっと……怒ってたんだろ?」
「ええ、まあ、怒ってましたよ」
「その割にはあっさり許してくれたような気がするんだけど」
「許すのは当たり前でしょう?
だって、これは喧嘩なのですから」
一ヶ月ぶりの箱入り思考に眉をしかめる
どういうこっちゃ
「喧嘩をしたら仲直りするのでしょう?
それなのに、いつまで経っても貴方は来てくれませんから、怒っていました」
「なるほど。でもそれなら貴方の方から来てくれてもよかったんじゃね?」
ぼそっと彼女はなにかを呟く。やけに恥ずかしそうに言うものだから聞き逃した。
「なんて?」
「初めての仲直りなんですから、お手本を見せてくれたっていいじゃないですか」
自信なさげに言ってるのは建前だからなんだろうか
本心はやっぱり頑固だったってことなんだろうか
女性はよくわからん
この長い妄想もようやく終わりが見えてきた!
けど思いのほか長くなりすぎてダレてるなwww
付き合ってくれてる奴らありがとwww
おやすみwww
読んでるからな
不良品乙
ラスト楽しみにしてるよ
明日投下する
終わりまであと3、4回の投下なんかな
では
読みづらくなってごめんな
そのへんがダレてると思うwww
もう跡取りいないから、この子生贄にしたら終わりじゃね?
一族滅亡
ピュアホがたくさん子供作ってああげないと・・・
携帯からですまんがこれだけ
俺はこの時それに気づけんかったわwww
でも考えてみりゃあの婆って他にもおかしなことばっかやってたんだよなあ
ほんとアホ過ぎて気づけんかった
お前は頭いいな!
次の100年後生贄どころか当主不在