>>1の出身は?東北?
出身は東北ではないが、東北っぽく聞こえたんかな?
では投下
目が覚めたのでカーテンを見ると隙間から光は落ちていない
まだそんな時間かと思い寝直そうとしたら見慣れない寝顔があった
ああ、そういえばと思うまでに心臓が口から逃げ出そうとした
すやすやと寝息を立てる彼女
安堵感がじんわりと胸に広がって強い睡魔が震えだす
人と一緒に眠るってこんなに心地いいことだった
俺はそんなことも知らずに生きてきた
もしかしたら彼女も同じことを今日知ったのかもしれない
そう考えると気恥ずかしくなって夢の中で俺は笑ってしまった
どうせ朝には忘れている夢の中で
小鳥の囀りに起こされて大きく伸びをしながら目を開けていく
すると彼女が壁に背をつけて、俺を眺めていたので目線を逸らす
「ど、どうしました?」
「ふふ……いえいえ、おはようございます」
「ああ、はい。おはようございます」
恋をした数だったら俺の方が絶対に豊富なのに(失恋ばかりだったけど)
どうも彼女の方が上手な気がする
悔しいわけではないが腑に落ちない
だからといって甘言巧みに彼女を酔わすことなんてできないんだけどな
まあ、でもさ
目を覚まして好きな子におはようって言ってもらえるだけでいいじゃんかと
童貞は思うよ、まじで
とりあえず親方に電話をして風邪ですと嘘ついて休んだ
今は仕事よりも大切な時だと思う
かといって、今から一ヶ月半も休んでいるわけにはいかないだろう
どうすれば彼女が生贄になることを諦めるのか
そのためにはなにをしたらいいのか
俺の気持ちも知らずに彼女はくあっと欠伸をする
つられて俺も欠伸をする
ごろりと彼女が膝の上に頭を転がしてきた
……え?
「猫がこうしてにゃあにゃあ鳴く理由が解ってしまいますね」
「……そうですか」
これってあれだ、ツンデレってやつだ
でもツンツンしてた時がなかったような……テンデレ? 天然デレー?
なんにせよ膝がおもむろに暖かくなってきた
傷の見えない柔らかそうな毛に手を置くと、やっぱり柔らかかった
撫でる、撫でない、撫でる、撫でないと迷った挙句撫でる勇気がなく撫でられないが選択される
ここまで密着してなぜ踏み込めないのだ
「とりあえず、ドライブでもしますか」
「ドライブですか?」
「はい。車は持ってないので、バイクで」
「バイク?」
彼女が首を傾げたので心の中でガッツポーズ
俺は彼女が驚いて嬉しくて声を高くするのを聞くのが好きだから
250CCのニンジャに火を入れると女の子を初めて乗せるからか、いつもよりもエンジンが歌っているような気がした
股下で小気味いいリズムを奏でるバイクに彼女を誘う
彼女は既に好奇心いっぱいの表情で、どんな体験が起きるのだろうかと胸を膨らましているようだった
明日はどんな楽しみが得られるだろうっていう、期待に応えられたかな?
ヘルメットを被せて、静かにクラッチを繋げていく
ここまで安全運転したこと今までなかった気がするな
三速で近くの大通りまで出て、アクセルを回して彼女に呼びかける
「しっかり捕まっててくださいよ」
そう言っても彼女は力を込めなかったから左手を後ろに回して彼女の手を掴み、俺の腹まで持ってくる
速度は大したことがないのだが、少し強め加速した
ぐんと後ろに引っ張られた感覚が彼女になにを与えたのかは解らないが、両手を腹に回した
どこに向かうか特に決めていなかった
彼女が好きそうな場所……海にでも行くか
彼女と出会ったのは浜のある海水浴場だったが、俺の地元にある海は防波堤に隔てられている
近くに大規模な鉄工所もあることで海は汚れているだろう
それでも釣りをするおっさんがちらほらといた
コンクリートで塗り固められた地面を徐行して先端に進む
頬を撫でる風は冷えていて冬の到来を匂わせた
波がテトラポットにぶつかり飛沫が舞う
それら全てが気に入ったのか、彼女は「気持ちいい」と大きくはしゃいだ
「しっかり捕まってないと落ちますよ!」
「大丈夫です、これくらいならっ」
俺には彼女の運動神経が並以下にしか思えないので不安は大きい
なんとか無事、防波堤の先に到着したのでエンジンを切って降り立った
行きがけの自販機で買ったジュースを彼女に手渡して、小休憩
「バイクって、素晴らしいですね」
快活に微笑む彼女を見て頬が緩まずにいられない
「初めて海を見た時、びっくりして腰が抜けちゃったんですよ」
広大な海を前に彼女は言う
「大袈裟な」
「いやいや、本当に腰が抜けちゃったんです。
ずっと村で育ってきましたから。
あ、でも、山の向こうにとても広い世界が広がっているとは聞いていました。
空が果てしなくあるように、世界も果てしなくあるって。
ですけど私が想像したのは連なる山なんですよね。
この村からずっとずーっと山が続いて、たまにこんな村があるんだろうな、って」
「海があるって知らなかったんですか?」
「大きな水たまりがあるとは聞いていましたよ。でも、こんなに大きいだなんて予想もできませんでした」
とことん彼女に対しての教育は偏っている
不良の俺でも知ってるぞ、地球の半分は水なんだ
……半分だったっけ?
「だから海を見た途端に腰が抜けちゃいました。
私はなんて小さな世界で生きてきたんだろう、って」
「でも、でもそれなら、もっと広い世界を見たいって思わなかったんですか?」
「思いましたよ? だからこうして、新しいことを知れて嬉しいです」
彼女の好奇心がこの程度で満足するとは思えない
だけど彼女の言葉が嘘とも思えない
結局は生贄の想いが好奇心を上回っているだけだ
好奇心を死ぬまでにできるだけ満たしたいという想いに納得できているだけだ
「この海の向こうになにがあるか知っていますか?」
聞くと彼女はんんっと唸って首を捻る
「山ですか?」
「山もありますけど、この海の向こうには新しい世界があるんですよ」
「新しい、世界」
「そう、新しい世界です」
俺にとっての彼女の村が別世界であるように
彼女にとっての海が別世界であるように
「俺に付いてきてください」
「ええ、どこに行きますか?」
「……この先の人生、ずっとです」
途端に彼女の顔から笑顔が消える
それが全てを物語っている
「あと一ヶ月半しかないですね」
彼女は絶対に解って言った
俺にそれを言わせない気だ
だけどお構いなしに俺は言う
「祭の後も、ずっとです」
無謀だとかそんな問題じゃない
俺は微塵も彼女が頷いてくれるとは思っていなかった
じゃあなんでこんな馬鹿げたことをしているのか
なんでって、そんなのは決まってる
単純に俺が馬鹿で、どうしようもないから
胸の中に渦巻く彼女に対しての想いが一刻と強まっていて、息をすることさえ億劫になってしまっていっているから
もう限界だった
いつまでも彼女に、貴方の理解者なんです、なんて面を被って応対するのは
好きな子が死ぬってことを理解してるなんて嘘を吐くのは、想像以上にしんどいみたいだ
だから、そんな俺の投げやりな告白だったから、彼女がそう言うこともなんとなく想像していた
「どうして?」
裏切られたように彼女は問う
裏切ったも同然なのかな
「どうして、そんなことを言うんですか?」
「死んでほしくないからです」
「生贄にならなければ村の皆がどうなってしまうか、解っていますよね?」
「そんなものは嘘なんです。生贄がいてもいなくても村に影響はありません」
「そんなの、わかりません。仮に生贄が捧げられず村に危険が迫ったら、どうするんですか?」
「山神がいるという証明だってできないはずです」
「でもそれなら、危険度が低い方がいいです」
「それで貴方が死んでいたら意味がない!」
「解ってください。>>1さんがどうしてそんなことを言うのか、解りません」
「俺にだってどうすれば貴方を救えるのか解りませんよ」
「救う? 救うってどういうことですか?」
「言葉のままです。死ぬ必要のない人を救う。そのままですよ」
「……侮辱しないでください。私は救われる必要なんてありません」
「どうしてそうなるんですか。どう考えたって貴方が死ぬのは……無意味なんですよ?」
「……」
彼女は俯き黙ってしまった
そこで俺は自分の誤ちに気づく
俺はいま、どれだけ最低なことを彼女に言った?
「軽蔑、しました」
涙を必死に堪えて俺をじっと睨む彼女の形相に思考が止まった
恐ろしかったとか、そういう訳じゃなく
彼女が今までに見たことがないほどに悲しんでいたから、苦しかった
人って悲しいとこんな顔をするんだ、ってくらいに悲しそうだった
瞳は虚ろで、生気がなくて、目尻は低くて、口元もだらけいて
それでも俺を睨むのは、人生の根幹を否定されたからなんだろうか
程なくして黒服が現れた
いつから、どこから現れたんだってぐらいに瞬間的だった
俺の意識が外に向かってなかっただけで、多分ずっといたのだろう
細い目で俺を睨みつけた黒服は一言呟いて、彼女を連れ去った
一人となった俺は不意に空を仰いで黒服に言われた言葉を思い返す
終わりだ
ああ、確かに終わりだ
彼女を救うどころか彼女は俺に心を閉ざした
終わりはこうも呆気なくやってくるんだな、と思うとあまりの不甲斐なさに涙が溢れて止まらない
流石に俺はこれが初恋ってわけじゃない
だけど、恋が玉砕するってさ、こうも辛いもんだったかな
心に穴が開いたようだとは、ほんと、上手いこと言ったもんだ
おやすみなさいな
バイクを無事降りれてとりあえずよかった
東北じゃなかったかw知り合いの文体に似てたもんで
また続き待ってる
おまえは物凄く狭い世界に住んでいるんだな。
その人の文章が大好きだったんだ
いつか2ちゃんにスレ立てたいって言ってたから、もしかしてと思ってしまったwすまんな
とか適当なこと言ってみるーw
>>1 今日もありがとー!
また今度なー
また明日も楽しみにしてる