しかし婆さんは生贄にもならず、村の長っていうのはどういう経緯なんだろう
続き楽しみにまってるわー
100年に1度だからセフった!?
あと、母親はセックスして逃亡だなw
婆が生贄にならなかったのは>>247の言う通りその年代じゃなかったから
婆が例外的に村の長なんじゃなくて、彼女が例外的に生贄みたい
今日もちょっとだけ投下できそう
そろそろ後半な気がするから、今まで通りよろしく
待ってるぞ
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なにかを間違えた気がする
考えてみれば、なにもかもを間違えていた気がする
出会った時から間違っていた気がする
じゃあなにが正しかったってんだろう
■
そもそも彼女は俺が出会うべきじゃなかったのかもしれない
イケメンで金持ちな奴がスタイリッシュにナンパするべきだったのかもしれない
大体、未来も真っ暗な不良物件にナンパされてどこの誰が喜ぶんだろう
いやそんな女は山ほどいるけど、彼女にふさわしいのは俺じゃなかった
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そう考えると俺は彼女の命が救われたかもしれないチャンスを潰したわけだ
つまり、彼女の生贄に加担したわけだ
だから、俺だって彼女を殺した一人なわけだ
最低だ、俺
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蟻がぞわりと浮いてきて胸の辺りを食い破って中に入っていくことを俺は止められない
段々と意識が散漫になっていき思考も曖昧になって景色もあやふやになって自分がどこに立っているのかも忘れはじめた
そもそも立っていなかったのだから既に忘れていたのだろう
俺は家の布団の上から動けないでいた。動けないまま、どれだけの時が経ったのかまでは知らない
一日、二日、そんなもんじゃない
きのこでも生えそうなくらいには寝っ転がっていた気がするが、生きているからなにかしらしていたはずだ
なんで生きてんだろう
「おーい」
「おーい、いつまで寝とんねん」
「はよ起きれー」
「あー、ったく……では小噺を一つ」
「…………で」
「…………だから」
「…………ってなわけだ。はっはっは、面白いだろ?」
「え、聞こえんかったって? ほならドア開けなかんよな? ほらほら開けろやー」
「……ふう」
「おじゃましまーす」
無視していたらその内に帰ると願っていたんだけど、無駄なお祈りだったようだ
日常生活では耳にしないような破壊音と共にボロっちい玄関のドアを蹴り壊して中に入ってきたのは、解っていたけど友だった
俺は壁に背を預けていたから、出会い頭向き合う形だ
「くっさ!」
開口一番がそれかよと呆れそうだったが、そりゃ臭いもんは臭いだろう
窓を開けた覚えもなければ風呂に入った覚えもない
「なんやねんこの臭い」
鼻をつまみながらカップ麺の残骸や空の缶詰を足で蹴飛ばし、友は窓を開け放つ
途端に気温が下がっていって季節が変わっていたことを知った
窓際でわざとらしく深呼吸をした友は、荒れた部屋をぐるっと見回して、横にしゃがむ
「おやっさん心配しとったぞ
連絡もないまま一ヶ月も休むなんざお前にはありえんってな。
あのおっさんは相変わらずお人好しやな。俺らはちゃらんぽらんな不良やで?
気分が変わって辞めるなんざ、ようあることやろ」
返事をする気力は湧いてこない
それでも友は言葉を続けた
「高校卒業した言うてもおったことが恥みたいな高校や。
履歴書に書かん方がええんちゃうか、ってくらいのな。
そんな糞みたいな高校入ってアホやって、楽しかったよな?
当たり前や、不良やからな。
人に迷惑かけるとかそんなんどうでもええ。
自分が楽しかったら、自分らが楽しかったら上等や」
友の言葉が右から入って頭をぐるぐる回る
何度も何度も回り続けて、結局出てくることは自分が最低な奴ってだけだ
「やからな、アホみたいに塞ぎ込んどらんと楽しめや。
お前は昔っから不器用やから、なんもかんも自分のせいにしてまうけど、気にすんなや。
しゃーない、なんせ俺ら不良品やし」
あれ? こいつ、なんか言うことおかしくないか?
「……なんだそれ」
「めっちゃええこと言うたやろ俺」
「全然。お前は駄目駄目だけど仕方ないから気にすんなって、励ましてないだろ。なにしにきたんだっての」
「あれ、おっかしいな。先週のドラマでは大体こんな感じで上手くいきよったけど」
「それ絶対ドラマがおかしいわ」
バカバカしくなって次第に笑えてきた
笑うとふと肩が軽くなって、自分がいかにくだらないことで悩んでいたか分かってくる
不良品だから仕方ないか
「そうは思わないけどな、俺は。
友は不良品じゃないと思うよ」
「ほならお前も不良品やないんやろな」
あっけらかんと言い放つ
なんだ、俺はハメられたのか
自分に励まされちゃどうしようもない
「どこまでがドラマと同じなんだ?」
「全部」
だとしたら俺はどれだけ単純な馬鹿なんだ
「冗談。全部、俺が考えてん」
言われて、はんっと鼻で笑ってやった
精一杯強がってみせた
「お前はいい脚本家になるよ」
「んなダルいことやっとれんわ」
淀んだ空気が窓の外へと吸い込まれていく
息も白くなってきたってのに、どうにも暖かくて心地いい
「あー、友、スマフォ取って」
「どこに埋まっとんねん」
「机。机の上」
「おお、あったあった。電源切れとるぞ」
「充電して」
「なにコキ使ってくれとんねん」
と悪態を吐きながら充電器を繋ぐ友
基本的に言動が裏腹な奴だってことは知っている
ありがとう、なんて言う必要がないくらいには知っている
「今って十二月なんだろ? 何日?」
「二十日。あと四日でクリスマスやな」
「そっか……あと二週間ないのか」
祭は年明けに行われると言っていた
無駄に時間を過ごしちゃったな
「なあ……なにがあってん?」
「フラれただけだよ」
「フラれただけで引き込もんなや、童貞か」
「……童貞だよ」
「嘘やろ!?」
俺が皆に童貞だということは隠して、嘘ついて既に卒業済みと言っていたのを覚えているだろうか
友が驚くのは当たり前のことだった
ってか当たり前じゃなかったら困る。それって見透かされてたってことだろ? なにその恥晒し
隠せててよかった
「やって高校の夏休みん時ヤった言うとったやん!」
「そりゃお前らが全員中学で卒業してたからそうしとかんとかんかなってなって」
「あ、アホやろ」
「た、大切な問題だろ!」
「……ほんまにお前、ピュアホやな」
純粋とアホが融合した瞬間だった
結構相性のいい言葉な気がする
「まあええわ。この際どうでもええ。話戻そ」
できれば忘れてくんないかな、勢いで言っただけだし
「で、フラれたんか」
「おん」
「なんて?」
「一生傍にいてくださいったらごめんなさいって」
「重っ! 重いわ! お前はアレか、宗教かぶれか! 童貞は婚約相手に渡すんかい! どこの真さんやねん!」
そういえば最近真さん読んでないな
あれは中高生の青春バイブルだ、間違いない
「いやそういう意味で言ったんじゃなくて」
「どういう意味よ!?」
中身を話さずに要点だけ伝えるって俺には無理だ
どうすりゃいいかな
あまり人に話して楽しい話じゃないから言いたくないな
「えっと、そうだな。
仮に友が外国人と付き合ったとするじゃんね」
「おお、実際付き合ったことあんで」
「まじか。そんでそん時、国が違うから文化が違って分かり合えないって時なかった?」
「基本そうやな。正直セックスも趣味が合わん。国によるんやろうけど」
「あっそう」
なんでだろう、急に話す気が失せてきた
豆腐の角さんこっちですよ、こっちにいい頭がありますよ
「そんな時どうする? 自分に合わせて貰うか、相手に合わせて貰うか」
「……ははん、話の裏が読めてきたで。ずばりお前とあの子はそんな感じやってんな……ってあれ、写メで見た感じやと日本人やなかった?」
「日本にも色々あるからなあ」
「まあ、そやな」
友が想像したのは在日や部落や出稼ぎの人達だろう
流石に彼女みたいな特別を予想できるとは思えない
ただ、起こってることに大差ない
「俺やったら、忘れるけどな」
「……まあ、それもあるよな」
「どう考えても面倒臭いやんそんなん。
価値観が全部とは言わんけどよ、根っこは同じやないとやっとれんぞ」
そういう意味では彼女は根っこが同じだった
なんでだろう、彼女は日本人として育ったとは思えないのにな
日本人というより、あの村の人だ。国って単位ではなくて、そこで産まれた人
「それができないくらいに好きだったら?」
「そこまできたら二つに一つやろな」
「ん?」
「相談するぐらいやから中間はないんやろ。
フラれたぐらいやからこっちの要求飲まんかったんやろ。
やったらもう一個しかないやん?」
「……だわな」
「でもお前はそれでいいんか?」
結局はここに突き当たるのか
自分の全てを捨ててでも彼女と一緒にいたいかどうか
それを選ぶほどなのかどうか、というだけ
「女なんてほんまに星の数ほどおるからな。
それでもあの子がええって言うならそれまでやけど」
友の言葉を胸に俺は目を閉じる
彼女に出会ってから今までのことを、鮮明に思い返す
.
..
…
….
…..
「うん、俺は彼女が好きだ」
十数分かけて選んだ俺の想いに、友は呆れたようにそっぽを向いた
「やろな」
最初から解っていたと言わんばかりの言い草だ
いや本当に解っていたんだろう、きっと
忘れないうちにこれだけは言っておかなければならなかった
「ありがとな」
「なんやねんいきなり」
言う必要のない気の置けない間柄ではあるけんど
多分、もう言えなくなるだろうから
それが、生贄になる彼女の生き方を理解するってことだと思うんだ
んじゃまた
>>1、乙
気にいった
友の優しさに前俺が泣いたわ
待っとるよー
待ち
これ凄く好きだ、続き待ってる!
童貞のピュアホ