そして途中で話題に上がった屋敷の血が途絶えるからという言い訳で終わってしまったか
パッピーエンド……ではないが
生きてて良かった
ハッピーねw
ありがとうwww
数年後なあ……と思っていたがなんかそれっぽいのが書けたから投下しておく
家に帰った俺は早々にネクタイを緩めて放り投げる
その足で冷蔵庫に向かいビールの缶を取りだした
慣例化してしまっただけの特に意味のないアルコール摂取だが、止めようと思う気は湧きそうもない
畳に敷かれた座布団に座り込みテレビをつけ、きんきんに冷えたビールの蓋を開け放つ
涎の沸く音の連続に喉がごくりと鳴って、じゃぶじゃぶと溢れそうな泡を零さないよう、反射的に下から掬うように飲んでいく
「ぷはっ」
思わず漏れた息に混じった加齢臭の濃度はいかほどなものか
一連の流れといい、日々の抜けない疲れといい、思わずにはいられない
老けたな
特に興味のない番組を眺めながらいつも通りの一日が終わり、静かに死へ近づきながら眠るのだろうと、やや自虐的に考えていた
そんな夜の来訪者だ
チャイムが鳴ったので玄関に向かった
インターフォンが付いていない化石的な家だが値段の安い物はいつまでも作られ続ける
ドア越しのスコープを覗くと光に照らされた黒い頭が揺れているのが見えた
時間は八時を過ぎていて、そこらの子供が遊びに来るにはちと遅い
悪戯にしては冗談にならない時間帯なので、気を引き締めてドアを開けた
来訪者はドジなのだろうか、ごつんと扉に頭をぶつけたようでうずくまっている
「……大丈夫か?」
他人とはいえ相手は子供だ
危険意識は遠のいて純粋に手を差し伸べた
顔を上げた子供は少女だった
眉間に皺を寄せて口を尖らせて
あまりにも知った人に似ていたものだから口を抑えた
一瞬、時が止まったことを自覚した
暫くの間、見詰めていた
四十を過ぎた男が少女に使う言葉じゃないが、見惚れていた
似てる
とても似ている
瞳も、口元も、鼻の高さも、髪の色や長さに至るまで――まるで生き写し
同じ人かと疑うが有り得ないことだった
「こん、ばんわ」
少女は痛みを堪えながらも必死に挨拶をした
つい、緊張が緩んで笑ってしまったよ
「ああ、こんばんわ」
同時に嬉しくなって笑ってしまったよ
俺は沢山のことを一度に理解してしまったから
昔から頭の回転は早い方だったが、この歳になっても衰えていなくて本当に良かった
お陰でこんなにも満ち足りた一日を送ることができる
少女を家に上げたものの、彼女は警戒心を抱いていた
当たり前だ、見知らぬ大人の家に上がり込んでいるのだから
出したオジンジジュースに手をつける素振りもない
「今日はなにをしに来たんだ?」
「ああ、いえ、あの……」
もじもじと自分の思ったことを言えない恥じらいが少女には有った
そう考えてみれば少女はあの人にあまり似ていない
生き写しと言っても似ているのは外見ばかりで、中身はそうでもないようだった
……当たり前か
「宝物、を……その」
「宝物?」
「宝物を、貰ってこい、と」
「……そうか」
少女がどういう経緯で家に来たのかは大体予想がついた
そうと解かれば少女がこんな時間に外を出歩いていたことも納得できる
なにせ一人じゃない
まだ姿を現していない変わり者が扉の向こうで立っているはずだ
俺より歳上だが、元気そうだ
よかったよかった
「宝物か。それは誰の宝物と?」
「……?」
無言で首を傾げている
なにも聞かされていないらしい
といっても予想はついているからそれを少女に渡しておこう
違うなら自分で取りに来いという話だ
少女が声を出したのは俺が立ち上がった時だった
「一人……で?」
きょろきょろと、一人で住むには広い家を見渡して少女は疑問に思ったらしい
一人で、の後に続く言葉によるが基本的に一人でいることが多いので、俺は少女にそうだと肯定した
だけど、付け加えなければならないことがある
「君が一人じゃなかったように、俺も一人じゃなかった」
肯定したばかりだというのに否定したからか、少女は眉間を寄せて考え込んでいて、うんうんと唸っていた
俺は一人じゃなかった
こうして家族も作らず、一人で生活してきたというのは間違いじゃないが、一人じゃなかった
酒を飲み合う友達もいれば、未来を語り合う仲間もいる
そいつらの子供は俺にとっても子供であり、彼らにとって俺が第二の父親であればありがたい
日々を惰性で過ごすこともあるが脂ぎった活力で走り回る日だってある
俺は諦めずに全力で前進することを求められたのだ
振り返れば走りだした場所は遠すぎる
だから後悔をすることなく本気でいられた
仮に感謝するとするなら、俺はあの村の長に頭を下げるだろう
貴女の言葉が胸に刻まれています
ありがとう
出したオレンジジュースが半分ほど減っていた
毒は入っていないと警戒心を緩めてくれたのか?
そんな判断に思わず苦笑いし、少女に"宝物"を渡した
「これが、宝物?」
「だろうな」
価値が高いわけでもない、古びた一台のカメラは久しぶりの光にあてられてレンズが光る
ずっと使っていないから壊れているかもしれないが、あいつが俺に預けた宝と言えばこれ以外にないはずだ
「パパ、写真が好きだから?」
「それだけじゃない」
「ママ、写真が好きだから?」
「それだけでもない」
「……じゃあ、どうして?」
「だから宝物なんだろう」
一人だけ理解できていないことが悔しいのか少女が俺を睨む
睨まれた所でどうしようもない
正直、俺だって理解しきれてないのだ
「袋に入れてあげるから、これを持ってお帰り」
「あ、これ」
思い出したように少女はポケットから一枚の手紙を取りだした
「おじさんが宝物を探してくれたら、渡してって頼まれたの」
怪訝に思いながらも封を切って手紙を開く
すると初っ端から苛立ちで破きそうになった
『引っかかってやんの!』
それはそれはとても大きな一文だった
後にはこう続いていた
『カメラとか持たせたんじゃねえの? お前らしいけど残念でした。
それは不正解だから、さっさとカメラ持ってうちの娘を送ってくれな(はぁと』
無意識に半分ほど破いていたが少女の視線に気づいてぐっと堪えた
あいつ、会ったらあの時よりも顔を腫らしてやろう
「パパ、なんて?」
「君を見送ってほしいと書いてある。パパとママの所へ行こうか」
二人の下へ帰ることが嬉しいのか、破顔一笑、彼女は頷いた
外に出ると予想通りもう一人がいた
「お久しぶりです」
「あら、老けたねえ」
「お互いにね」
「はぁ?」
「冗談です」
彼女は共にあの家を護った間柄だ
主に俺は外を、彼女は内を護っていた
ずっと違う道を進んでいたが、久しぶりに護る対象が一致した
彼女が繋ぐ手は少女を護り
少女が俺の手を繋ぎ真ん中になる
前に触れたのは赤ん坊の頃だったか
「君は将来、なりたいものはある?」
「ん……ケーキ屋さん」
本当に素晴らしい夢だと思った
希望に満ちた将来だと思った
なにせこの少女には可能性がある
未来に続く百万以上の道がある
君はどんな人にだってなれる
成りたいものに成る時間がある
だから頑張るといい
説教臭い言葉をぐっと喉奥へ飲み込んで少女へ言う
「いい夢だ」
俺はもう一度護ろう
少女が夢見る世界を迎えるために
しかしとりあえず今晩は、古い知人と酒を飲もう
どうせ一番に酔いが回るのはお嬢様だろうから、眠ったお嬢様を肴に語ることも多くある
なにせ彼女は俺の妹のような存在で
貴様は妹を奪った憎い奴だ
「おじさんは、パパのおともだち?」
聞かれて否定するほど子供ではない
かといって頷けるほど物分りが良くもない
上手く答えられず言葉を濁して
「そうかもしれないな」と答えると
横を歩く年老いた婆が吐き捨てた
「なんら成長してないね、バカ大将と変わらんじゃないか」
あいつと一緒にしないでくれと流石にムキになってしまったが
なんともそれが子供臭いことだったので、貴女には敵わないなと苦笑した
パッピーエンドだろwww
駆け足感は俺も認める
スタミナ切れてたwww駆け足なのに息切れとはなんとも言えんが危なかったので終わりを目指しちゃったな
まともに終わらすならあと二万文字はいる・・・でももう五万文字超えててしんどかった・・・
言い訳だけどな!
あと度々出ていた屋敷の後継者不在話だけど、あれは最初っから仕様なんだ
ただ一つだけ失敗していたのが、たった一言でいいから黒服になにか言わすべきだったんだよな
そしたら伏線になったのに
この辺が妄想の限界かな
言い訳だけどな!
パッピーエンドをありがとうwww
黒服視点の後日談だろ
また次回作も期待してます
面白かったよ
また書いてくれ!
473だが無理言ってスマンかった
良かった!有難うございました
かなりの割合で建設業の若者は足が臭いんじゃないかな…
薬局で出してくれるかも?
興味があったら調べてみてくれ
これで足クサ生活ともサヨナラだぜ!
黒服のもとに思い出のカメラがあったってことは、写真からみではなかった気もする。
娘が6才くらいと仮定して、事件から3年くらいは心を閉ざしていたんだよな。
あぁ、もちろん、初夜はお嬢様が元に戻ってからだと思いたい。
黒服を連れて帰るミッションだよな
妹と言う表現が良いな、切ないが
次も楽しみにしてる、乙でした
黒服は独身かよ!!!ひどす!!!
黒服さんにも幸せな未来を!!!!!!!!!!!あしくさ
>俺より歳上だが、元気そうだ
>よかったよかった
黒服ってお前より年下の設定だっけ????
これって家政婦の事じゃないのか?
俺も家政婦だと思うわ
帰りの会話から察するにそうだろ
ってかこの後日談語り手を黒服にしてることを隠すためなんだろうけど軽い叙述トリックになってんだよな
不良と叙述トリックが結びつかんのだがwww
内と外って親切に書いてくれてるのに
何で黒服がカメラ持ってんだよ、とか言わんでくれなw
すまん。 主人公の娘と思って読んでた。
元ご主人様に老けたねって・・・www
なんにせよ楽しかったです、ありがとう