けどちょっとだけ投下しておく
想像以上に読んでる人いるみたいだしwww
俺は彼女に沢山のことを隠している。たった三度会っただけで、隠すもなにもないだろうって話かもしれない
けれど俺は意図的に話したくないと考えている
不良であったことも過去の誤ちも、家族のことも教えたくない
知られてしまえば嫌われるだろう。ただでさえどうしようもない俺の汚れた過去だ
反対に俺は今、彼女のことを知る場所へ足を進めていた
第二日曜日
○○駅は家から七、八分と近く都会の人が見ればたまげるほどに錆びれた駅だ。それでもこうして電車が来るということは、それなりの利用者があるからなのか
昼前ということもあって陽射しが暖かいが、雲に隠れてしまえば途端に肌を刺す風が舞う。冬がこっそりと近づいていた
春には桜が咲く並木道の枯れ落ち葉を踏み砕きながら、威風堂々と現れたのは言うまでもなく黒塗りベンツだった
窓を下げて半身を乗りだし、大きく手を振ってこんにちわと微笑む彼女が上機嫌に思えたから、近づいて
「機嫌がいいですね。なにかあったんですか?」
と聞くと、「なんでもないですよ」と目線を逸された。俺に言えないいいことがあったのだろう
後部座席の扉を開ける
「ささっ、早く乗ってください」
腕をぐいっと引っ張られた反動でまだ外にあった頭が上部の枠にぶつかった。彼女はごめんなさいと謝ったけれど、数秒も経たないうちにさあさあと車内に引きずりこむ
今までにないちょっとばかり我侭な一面が見られて、俺は頭の痛みも忘れて密かにニヤつき、ベンツに乗った
「腫れてます? 大丈夫です?」
彼女の手が額に近づいてくる――途端に車が急発進した。何事かと体制を整えると彼女が俺の膝上に寝ていた。ちょっと失敗した膝枕みたいになっていた
黒服の運転の腕は確かなはずだ。こんなに不自然な急発進は今までなかった。わざとか? アクシデントを演出するため? 応援してくれてんのか?
黒服、やっぱいいやつだ
視線を下げれば膝の上に彼女がいる。幸福だと叫びたい
が、彼女は恥ずかしがることなく平然と体を起こし、黒服に「運転荒い」と注意した
脈アリかなとか期待してたけど、やっぱ勘違いだったんかな
「結構遠いんですね」
車に揺られて三十分。近くのインターから高速に進路を変えて北に登り、暫くして高速を降りて更に山の奥へ奥へ
舗装されたにしては荒れたアスファルトを走るベンツは純正なのか改造してあるのか振動を感じさせずに進んでいく
トンネルを抜けても次の山を目指し登って降ってを繰り返す
「あと二十分ほどで着きますよ」
彼女の言葉通り、それから二十分後に車は山を降りて山に囲まれた村の中へと入っていった
とても広い村だ。でもそれ以上に、田舎過ぎた
見渡す限り畑だらけで時折大きな一軒家がぽつぽつと建っている
人気は殆どなく、田んぼ道を車は器用に走って村の奥へと進んでいた
途中で辺りの景色が変わり、畑よりも家の建ち並びが目立つようになる
するとどこかで鐘を打ち鳴らしたような高く伸びのある音が響いて、それが合図だったのか家からわらわらと住民達が外に出てきた
異様な光景だった
徐行で進む黒い車を、礼儀正しい姿勢で一礼する人々。それは子供も例外ではなく、現れた数十人は深々と、車が過ぎ去っても頭を下げ続けたままだった
「いまの、って……?」
「どうかしましたか?」
明らかにおかしい現実的ではない光景だ。時代も世界も間違った息を呑む光景だった
それでも彼女は普段通りの表情で、小さな首を傾げるだけだった
家の建ち並びから数分、転々と建っていた立派な家とは比較にならないほどの大きな家――いや、屋敷に突き当たった
俺と彼女を車から下ろすと黒服は車でどこかに行った。多分、駐車しに行ったのだろう
横幅だけでも想像を絶する長さだけど、奥行なんて考えられもしない
突然の衝撃に脳内で疑問符が踊っていたけど、解ったことだってある
彼女はこの屋敷の住人だ
村の人々に大名行列の如く頭を下げられて当たり前なだけの権力を持って、広大な屋敷を建築して維持し続けるだけの財力を持った、俺とは住む世界の違う住人だ
「入りましょう」
言って、彼女は俺の手を握って進もうとした
不意に足が止まって繋いでくれた手を切ってしまう
どうしてそんなことをしてしまったのか、考えても理由が浮かばない
本当に浮かばないのか? なんの気なしに自分に問いかける
本当は知ってるくせに。つまらない冗談を言うように自分を追い詰める
彼女が触れてくれた手を眺めると、俺にはとても、汚れて見えた
「すいません、行きましょう」
手は、太ももの横に置いたまま
門から二分歩くと全体の大きさの割には小ぶりな引き戸の玄関があった
彼女が前に立つと自動で開かれたからまさかの電動式を疑ったが、なんのことはない内側で開けてくれた人がいた
「おかえりなさい、お嬢様」
「ただいま」
金の装飾が豪華な木目の下駄箱が横に備えつけられていて、壁には本物かどうかは知らんが熊の毛皮っぽいのが飾られていて、俺の家(1R七畳)ぐらいはある玄関に面食らう
それよりなにより、金持ち御用達の人物に目が行った
「メイっ……ド?」
「メイドは西洋の文化です。日本では家政婦ですよ、ご友人」
割烹着に身を包み朗らかな笑顔が特徴的なおばちゃんは、俺の方を一切向かずにそう言った
お陰でぞくりと背筋が凍る
「はは、すみません」
「気になさらないでくださいな。お嬢様、自室へ案内なさるのですよね?」
「うん」
「わかりました。お茶を持っていきますので」
靴を脱いで中に入り、広い玄関に踏み入れる
背中に突き刺さる刺のような視線は、我が家のお嬢様を狙う者への警戒心というよりは、たかだか十八歳でなにを言ってるんだと笑っちゃうかもしれないが、殺意と呼ぶ他ない代物だった
また書き溜めてくるけど今日投下できるかどうかは解らん
ではまた
リアルか? 妄想だぞwww
大体俺みたいな足の臭い不良がそんなお嬢様と出会えるわけがないwww
やめろ、イメージ壊れるwww
なんか>>112の心情がさ、絶妙だなと思ってさ
イメージ?
俺は>>1や>>2で掲げた糞スペックを忘れさせるイメージを持たせているのか
足が臭いくせにやるじゃん俺www
ありがとwww足臭いけど照れるわwww
いや、お前のイメージっつうか、話のイメージなwww
でもそんなお前が嫌いじゃないぜ!
乙
次楽しみにしてるよー
俺の友人は足と脇とち●こが臭いwww
よかったwww
ちんこは臭くないwwwwww
改めて読んでくれてありがと
今日は寝る、おやすみ
女性の部屋に入るのは人生で初めてのことだった
とそんなことを言ってしまえばあまりにも俺が女と縁が一切なかった可哀想な野郎と思われるかもしれないけど、これでも遊んだことぐらいはあるんだからな
初めてのことだったけど、俺は全く緊張しなかった
それは余裕があったとか関心が他に向いていたからだとかではない
……彼女の部屋があまりにも女性らしからぬ部屋だったからだ
ってか、人が住んでることすら怪しいんだ
「どうです? 私の部屋」
と彼女は聞いてくるぐらいだから、俺を欺くために用意した自室でなければ本当に彼女が寝ている部屋なのだろう
でも、これはあまりにも……人の臭いがしない部屋だ
生活感が一切なく、この部屋の主がどうやって時間を過ごしているのか、なにも想像できない
机もない、テレビもない、パソコンもない、本棚もない、色もない、顔もない
趣味に通じる物は一つもなく、畳の部屋には座布団が二枚並んでいるだけ
ただ、景色がそこに在るだけ
「綺麗にしてるんですね、部屋」
それ以外になんて言えばいいんだ? 畳の匂いについて語れとでも?
冗談を吐く気力もなかった
並んだ座布団に座った俺と彼女は、無駄に広い畳の部屋の中心で向かい合った
さっきの家政婦がお茶と菓子を持ってきてくれた
「いつもはなにをして過ごしているんですか?」
出された栗の和菓子はとても甘く、冷たい緑茶とよく合った
と冷静ぶってるが、本当のところは食べ合わせた瞬間に目をひん剥きながら「うまっ、和菓子やべえっ」と素を出してしまい、彼女に笑われたとかそんなひと時もあったりした
さておき、俺は彼女に過ごし方を聞いた
「琴や三味線を弾いたり、庭の縁側に出て鯉に餌をやったり、日がな一日空を眺めていたり、色々なことをしてますよ」
屈託のない笑顔で言う彼女を見た時、俺は気づいた
「この土地は温泉も湧いているので、週に一度は浸かりに行くんです」
彼女がどうして、儚く、淡い存在なのか
「夜になると星が一面に輝いて、宝箱のようで綺麗ですよ」
箱入り娘である彼女は、俺に言われるまで箱入り娘だという自覚を持たず、不自由な環境を自由と想うしかなく、比較対象がないため自分を憂うことすらさせてもらえない
俺はそんな彼女を哀れんだ
小さな世界が彼女の全てであるということは可哀想だ
それが彼女の様々な、全ての理由になるんだろう……そう思った
だけど、やっぱり俺は馬鹿だった
俺が気づいたことは彼女を象る半分にも満たなかった
彼女が知っている俺が半分にも成りえていないことと同様に
「そんな素敵なこの村を、貴方に紹介したかったんです。私の全てが詰まったこの村を」
「私が護る、この村を」
静寂がしんと降ってくる
無音の囀りが降ってくる
彼女のどこまでも深い瞳の虹彩に、不思議なほど吸い込まれていく俺がいる
「知ってくれて、ありがとうございます」
箱入り娘はそう、言った
おつかれ
またよろしくな
おやすみー
楽しみに待つよ
オラわくわくしてきたぞ