その① その② その③ その④ その⑤
その⑥ その⑦ その⑧ その⑨ その⑩
その⑪
822:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/25(土) 23:12:31.27 ID:DgHixON+0
とりあえず休憩を入れよう。そして渾身の一枚を撮ろう。
俺「姉ちゃん、後5枚なんだけど一休みしよっか」
姉「うん。わたしコーヒー淹れてくる」
そう言って姉貴は部屋を出て行った。
もう6時を過ぎている。さすがにこの時間になると外は暗い。
姉貴のベッドに座って部屋を見渡す。
引越しの準備がほとんど済んでいるこの部屋は、ひどく殺風景な気がする。
山積みにされたダンボール、本の無い本棚。
新居で使う家具はもう姉貴が買っているみたいだから、
ベッドや本棚は置いていくつもりなんだろう。
机の上においてあるリグには手製のカバーが掛けてある。
もう使う気は無いという意思を感じた。
本当は写真なんかを撮っている場合ではない。
姉貴の欲しいものを聞かなければいけないんだけど・・・。
うまく聞きだすことが出来ない。照れて口に出せない。
迷っている間に姉貴がマグを二つ持って戻ってきた。
姉「コーヒー切れてるみたいだから紅茶にしたよ?」
俺「コーヒーよりも紅茶が好きだから、その方が良かったよ」
姉「良かった」
そう言うと俺の隣に座り、マグを手渡してきた。
俺「大体片付いたの?」
姉「うん。あとは服とかかな?これは引越しの前日にやるよ」
俺「そっか・・・・」
823:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/25(土) 23:13:41.58 ID:DgHixON+0
プレゼントに何が欲しいかなかなか聞き出せない。
どうしても照れてしまう。
姉「写真さ、私ばっかり撮られてるよ?千里くんのは?」
俺「俺の写真?べつに俺はいいよ」
姉「あと5枚残ってるんだよね?撮ろうよ」
俺「姉ちゃん、このカメラ使えないじゃん。だから俺は撮れないよ?」
姉「う~ん・・・。スイッチや数字がたくさんあって、よくわかんないしなぁ。じゃ、一緒に撮ろ?」
俺「・・・そうか、そうだね。じゃ三脚取ってくる」
俺の写真を欲しいとは思わないんだけど、
姉貴と一緒にとった写真は欲しいと思う。
早速三脚を取ってきてカメラをセットする。
俺「じゃ俺、姉ちゃんの隣に座るから。
カメラのここが赤く光るから、点滅が早くなったら2秒でシャッターが切れるよ」
そう言ってセルフタイマーをセットし姉貴の横に座る。
最初の一枚はそれで終わった。
姉「あと4枚だよね?」
俺「そう。撮っていい?」
姉「うん」
次の写真はシャッターが切れる寸前に姉貴が腕を組んできた。
俺「勘弁してよ~。今の俺の顔、たぶんめちゃくちゃ変な顔してるよ?」
姉「いいじゃん。記念だよ?」
俺「いや、記念だけどドッキリはいいよ。写真はずっと残るんだから」
姉「え~じゃあ次は最初から腕を組むよ?」
俺「・・・・もう好きにしてよ」
そう言って次の2枚は姉貴と腕を組んで写真を撮った。
824:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/25(土) 23:14:14.05 ID:DgHixON+0
最後は・・・・。
姉「じゃ最後は普通に撮ろ?」
俺「ん、わかった」
シャッターを押し姉貴の横に座った。
カメラの赤いLEDがゆっくり点滅を始める。
やがて点滅のスピードが速くなってシャッターが切れる寸前、姉貴が俺の頬に軽く口付けてきた。
俺「うわっ。今のはびっくりした。ひとこと言ってよ」
姉「言ったら千里くん、絶対拒否するもん」
俺「まぁ・・そうかな」
これで渾身の一枚が取れたかどうかは不安だけど・・・。
とにかくフィルム1本を使い終わった。
また姉貴にプレゼントのリクエストを聞きそびれてしまった。
ちょうど階下からオフクロが夕食の準備が済んだと大声を出している。
親父も帰ってきてるみたいだ。夕食のときに姉貴に聞くことにし、カメラを片付けた。
《またタイミング逸した》
そう思ったのは夕食が終わった時だ。
親父から社会人になる姉貴へプレゼントがあった。
それはたいした物じゃないけれど、先を越された気がして、姉貴に聞くタイミングを逸してしまった。
825:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/25(土) 23:14:36.46 ID:DgHixON+0
結局その日は姉貴に聞くことが出来ないまま、日曜日を迎えた。
前日寝つくことが出来ず、目が覚めたのは昼前だった。
姉貴は友達の家に行っているし、姉貴の欲しいものを聞くことが出来ていない。
けれども今日中に準備をしなくては時間がない。
《時間が無い》
姉貴に聞くのはもうあきらめる。
だから自分で選ぶとして、選択肢を絞ろう。
身に着けるもの、食べるもの、仕事に使うもの。
食べるものはすぐ無くなってしまうし、仕事に使うものは何がいいか分からない。
結果、身に着けるものがいい。さらに選択肢を考える。
アクセサリー、下着、洋服。
アクセサリーなんてとても買えない。そんな店に入る勇気が無い。下着も同じ。
じゃあ洋服。自分で買える店で売っているもの。女性もののは除外しなければいけない。
さんざん迷った挙げ句、ジーンズを買う事にする。
後はサイズだ。
今の姉貴のジーンズのサイズが分かれば、それと同じサイズのジーンズを買えばいい。
オフクロに頼み、姉貴の部屋からジーンズを取ってきてもらう。さすがに姉貴のタンスを漁るには気が引けたから。
これで股下とウエストが分かった。太っても痩せてもいない姉機だから普通のジーンズを買えばいい。
ジーンズは俺が良く行くジーンズショップで買おう。
ようやくここまで決めて家を出た。
826:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/25(土) 23:15:03.29 ID:DgHixON+0
自宅からかなり離れた繁華街にそのジーンズショップがある。
店に入るといつもより客が多い。店員も忙しそうで相談に乗ってもらえそうに無い。
自分で決めるとなると、定番ジーンズにしておけば、はずれは無いと思う。
リーバイスの501が定番ではあるけど・・・・。ボタンよりもファスナーのほうが便利だろう。
505に決定。
目当てのジーンズをレジに持っていくと、裾カットは今日中に出来ないらしい。
仕方が無い。来週の土曜に姉貴と一緒に取りに来よう。
プレゼント用の包装を頼み店を出た。
ついでに昨日のフィルムをラボに出し、ダイレクトプリントも頼んでおいた。
後は・・・碇にアリバイを作ってもらわなければならない。
《奴に何って頼むか・・・》
姉貴と泊まるからなんて言える筈も無い。
架空の女の子をでっち上げて泊まりに行くことにする?
間違いなく根掘り葉掘り聞かれる。
《考えてもしょうがない》
それしか結論は出ない。
あまり早いうちに碇に頼むと間違いなく質問攻めにあうから金曜日に頼もう。
そして何事もなく金曜日を迎えた。
833:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/26(日) 01:34:06.67 ID:hQzf5aNl0
放課後、JOGを飛ばして碇の家へ。
なかなか碇に言い出せず、とりあえずゲームをして過ごす。
《困ったな》
考えてもしょうがない。ここを頑張らなければ俺の明日は無い。
意を決して碇に話そう。
俺「なぁ碇。頼みがあるんだけどさ」
碇「なに?頼みって」
咥えタバコのまま碇はコントローラーを持ち、TVから目を離さない。
俺もタバコに火をつけ、気持ちを落ち着かせる。
碇「早く言えって。言いにくい事か?」
俺「う~ん・・・。碇は明日暇か?」
碇「多分。放課後いつもの峠に行く位かな?お前は生徒会の会議だろ?」
俺「そう。で、碇の夜の予定は?」
碇「特に無いけど。気が向いたら夜走りするかな。明日の夜になんか用がある?」
俺「いや、用はないけど・・。頼みがあるんだ」
碇「だから早く言えって」
俺「明日の夜、一緒にいる事にしてくれない?」
碇の咥えタバコから灰が落ちた。
そんなことを気にせず、碇はTVから目を離しこっちを向く。
834:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/26(日) 01:36:07.19 ID:hQzf5aNl0
碇「お前・・・・女か?」
俺「う・・・ん・・」
碇「いつ出来たのよ?俺聞いてないよ?隠密行動で女作ったんか?」
俺「いや・・・だから」
碇「ほんと、誰?どこで知り合ったの?」
《相手は姉貴で、生まれたときから知り合い》
さすがに言えない。
俺「すまんっ。本当に勘弁して。言えないんだわ」
碇「そりゃ無いだろう?」
そう言って碇が首を羽交い絞めにしてくる。
俺「チョーク、チョーク」
碇「話したら放してやる」
俺「ほんと、言えないんだって」
碇「話す?」
俺「ダメ」
碇「年は」
俺「・・・年上かな・・」
碇「マジでっ?どこで?」
俺「言えないって・・っつうか苦しいって」
ようやく碇が手を解いた。
碇「お前の姉ちゃんの知り合い?」
《その手があった》
俺「そう。だから言えないんだわ」
碇「そうか~。ま、いいよ。お前んちから電話があったらアリバイ作ってやるから。
でもいつか紹介しろよ?」
俺「わかったよ」
《一生お前には紹介してやらない》
なんとかアリバイつくりは出来た。
835:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/26(日) 01:38:10.02 ID:hQzf5aNl0
後は明日が来るのを待つだけだ。
家に帰り、その日は早く床についた。
土曜日は快晴だった。暑くも無く寒くもなく。
もう皆食卓で朝食を摂っている。
俺もそれに混じり、朝食をとる。
そして・・・。
お袋と親父に今日の夜は碇の家に泊まりに行くと告げる。
許可がでた。
こういう部分は理解のある親に後ろめたさを感じつつ感謝。
姉貴も外泊の話をしているみたいだ。
今日は授業が終わった後、生徒会の全体会議だ。
早く帰宅したいからJOGに乗って学校へ行った。
当然、学校では碇がしつこく絡んでくるが一切答えない。
授業は上の空で、生徒会会議も議事なんて全く頭に無かった。
そして会議終了後、ダッシュで自宅へ。
JOGで学校に来て正解だった。自宅に着いたのは4時過ぎだった。
836:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/26(日) 01:40:13.27 ID:hQzf5aNl0
姉貴の部屋に飛び込む。
姉「ノックくらいしてよ。びっくりしたよ?」
俺「今帰った。今日はどういう風にしようか」
姉「言ってる意味がわからないよ?どうやって出かけるかってことだよね?」
俺「そうそう。いつものジーンズショップとラボにも寄りたいんだけどいいかな?」
姉「いいよ。繁華街の近くだよね。じゃあ・・マクドで待ち合わせようか?」
俺「え?一緒に出ないの?」
姉「別々のところに出かけるのに一緒に出るのって変じゃないかな?
それに千里君は碇君のとこ行くときはJOGで行ってるし」
俺「そっか。そこまで頭が廻らなかった。そうだね、マクドで待ち合わせよう」
姉「時間はいつがいい?」
俺「早いほうがいいよ」
姉「もう。がっつかないの。私の準備があるから・・。そうだね、5時半くらいはどうかな?」
俺「わかった。ラボとジーンズショップは先に行ってるから、マクドで5時半」
姉「うん。じゃあまた後でね」
姉はバスで来る気だ。
俺は碇の家に行くことにしているからJOGで行かなければならない。
JOGを飛ばし、ジーンズショップとラボに寄ってパチンコ屋にJOGを停めた。
一晩預かってもらおう。
837:(仮)大江千里 ◆Cx2R79r56A :2011/06/26(日) 01:52:56.80 ID:hQzf5aNl0
浮気はだめだよとかきれいごとを言ってみる。
続きは明日。
日曜の用事は土曜日中に済ませたから、明日は頑張るです。
ノシ
引用元:
867が語る
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1307795876/
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