最高のエッチ体験告白スレより
1: 投稿者:田中 投稿日:2013/09/10 19:45:08
学生時代、僕には二つ上のあこがれの先輩がいました。
髪が長くて、ちょっと色黒で、ジーンズ姿がとても似合う人でした。
僕は、どちらかというと冴えない、イケてない男でした(今でも)が、なぜか先輩は何かとよくしてくれて、飲み会なんかも、「田中くんも来るよね」と声を掛けてくれたりして、ギリ、仲間はずれにならずに済んでいました。
飲み会にいっても、先輩は、特に僕としゃべるわけでもなく、ほかの人たちとワイワイやっているのですが、たまに僕のところにやってきて、「田中くん、飲んでる?」と声をかけてくれる程度でしたが、それだけで、僕は嬉しかったのです。
そんな感じで、3ヶ月ほど経ったころ、図書館で調べものをしていたところに先輩がやってきて、
「田中くん、ちょっと、顔を貸してくれる?」
「ぼ、僕ですか?」
「ほかに、田中くん、いないと思うけど」
そういうと、先輩はスタスタと歩き始め、僕は本や教科書もそのままに、先輩の後を追いました。
つれて行かれたのは、誰もいない喫煙所でした。
先輩は、細くて長いタバコを一本取り出し、カチリとライダーで火をつけて、吸い込み、煙を吐き出しながら、言いました。
「田中くん、ちょっとは、身なりを考えなよ」
僕は、何を言われているのか、咄嗟にはわからなくて、黙っていると、先輩はタバコの先で僕の腰の辺りを指しながら、
「ねぇ、どうして、いつもパンツ、だぶだぶかなぁ。それとシャツは、パンツから出してくれる?」
漸く、先輩が、僕の服装の話をしているのだと、気づいた僕は、しどろもどろになって、
「あの、僕は、ぴっちりしたの駄目なんです。股間が締めつけらるの、好きじゃないし。シャツも出しちゃうと、お腹が冷えそうで・・・」
「お前は、子供か・・・」
そういうと、先輩は、僕のシャツを勝手にズボンから引っ張り出して、
「ほら、こうした方が、いいじゃん。君を見てると、私が、恥ずかしくなっちゃう」
僕の服装が、先輩とどこでどうつながっているのか、よくわかりませんでしたが、先輩はタバコを消しながら、ひとりで、うん、うん、と頷くと、僕はこれからシャツをズボンから出すことを約束させられ、その日は無罪放免になりました。
しばらく経って、僕が、無理をして、キツキツのジーンズを履いて学校に行った日でした。
先輩は、駅で僕を目ざとく見つけ、つかつかと歩み寄ってきて、
「ほら、いいじゃない。田中くん、背が高いんだから、その方が似合ってる」
そう言うと、先輩は、僕と腕を組むと、僕を促して、学校へと歩き始めました。
どう考えても、不釣合いな二人が並んで歩いているのですから、僕はとても恥ずかしくなりました。
でも、先輩はそんなことはお構いなしに、校門へと入って行きます。
校舎の前で、別れるとき、
「田中くん、今日は何時まで?」
「2時半には、終わると思いますけど」
「私は、4時まであるから、図書館で待ってて」
先輩は、それだけ言うと、僕の都合も聞かずに、朝の講義のある校舎へと向かっていきました。
先輩が、何を考えているのか、よくわからない中でも、待っていろ、と言われて、嬉しくないわけがありません。
午前の授業を受けて、食堂でひとり、ラーメンをすすっていると、うしろかから、ポンっと背中を叩かれて、耳の後ろから
「4時ね」
と言われて、顔を上げると、そこには先輩が食堂から友達と歩いて出て行く、後姿がありました。
「いくよ」
図書館でそう声を掛けられると、いつの間にか、先輩が僕の隣に立っていました。
バタバタと、本やノートをカバンにしまい込み、僕が立ち上がると、先輩は、再び僕と腕を組み、図書館を後にします。
駅までの道すがら、先輩が唐突に、
「すき焼きでいい?」
と聞いてきます。
僕が、曖昧な返事をしていると、
「お魚、好きじゃないでしょ?」
と断定的な質問をかぶせてきます。
確かに、その通りではあるのですが、どうして先輩がそのことを知っているのか、僕にはわかりません。
電車に15分ほど揺られた駅で降り立つと、先輩は僕を連れて、商店街に入っていきます。
手際よく、次々と肉や野菜の買い物をして、商店街を抜けると少し古いマンションがあり、
「ここが、私の下宿です。覚えておいてね」
それだけ言うと、先輩は、僕を連れて入りました。
女性の部屋にしては、あまりカラフルではありませんでしたが、きちんと掃除が行き届いている1DKの部屋でした。
「何か、飲む?」
「トイレは、そこだから」
「テレビでも、見ていて」
先輩は、僕に伝えることだけ伝えると、腕まくりをして、キッチンに立つと、食事の用意を始めました。
僕は、ここで何をしているのだろう。どうしてここにいるのだろう。
テレビの音も耳に入らずに、そんなことを反芻しながら、待っていると、先輩が、食卓にすき焼き鍋と肉や野菜をきれいに盛り付けた大皿を次々と並べ、
「味付けは、任せるからね」
と言ってきます。
僕が、すき焼きを作っている間に、先輩は、トントントンと包丁の音を響かせて、冷たい前菜をつくり、僕の前に並べます。
ぐつぐつと鍋が煮えたころ、先輩は、僕と向かい合わせになって食卓につき、さっさと肉や野菜を取り分けていきます。
「いただきます!」
先輩が、胸の前で、手を合わせとき、やっと、僕は、
「倉田さん・・・、これは・・・」
少し、沈黙があって、
「田中くん、こうでもしないと、前に進まないでしょう」
「あの・・・、前に進むって?」
「だから、私たちのことよ」
「・・・倉田さん、本当に申し訳ないんですけど、僕には、話が見えてなくて・・・」
そう言うと、倉田さんは、ちょっとため息をつき、箸を置いて、正面から僕を見据えると、小声で、
「この、鈍感」
と言った。
「田中くん、私のこと、好きでしょう?」
「・・・はい」
「私が、田中くんのこと、好きなのもわかっているでしょう?」
「・・・いや、すごく親切にしてもらってる認識はあるんですけど・・・」
「どこの世界に、好きでもない男に、こんなに親切にする女がいると思う?もう、知り合って3ヶ月だよ」
「いや、でも・・・、僕はこれでも自分のこと、わかっているつもりで・・・、その・・・」
「ちっとも、わかってない! 田中くん、わかりやすいから、私の方が、わかってると思うけど、自分では、ちっともわかってない!」
「・・・そ、そんなもんですかね?」
「そんなもんです! いい? 田中くんは、私のことが好きなの! 私は、それ以上に田中くんのことが、好きなの! そこんとこ、わかってる?」
『うわ、それ、そんなにストレートに言っちゃう?』
僕の気持ちは、図星だったが、倉田さんは僕のことをそう思っているなんて、思えるわけがなかった。
「でも、人の心の中までは、読めないから・・・」
「あんた、ばかぁ?」
エヴァのアスカが言うように、倉田さんは呆れた感じで僕に言った。
「でも、でも、倉田さんは、どうして僕が倉田さんを好きだって、言い切れるんです?」
「好きじゃないの?」
「いや、そうじゃないです、その、好きは、好きですけど」
「ほら、ごらんなさい」
「いや、僕が言いたいのは、どうして、倉田さんは、僕の気持ちがそんなにわかってるって、自信をもっているのか、ってことなんです」
「だって、私、ずっと田中くんのこと見てたもん。バイトは、何曜日と何曜日か、毎日の授業の時間割、全部知ってるよ。」
「倉田さん・・・、それって」
「ストーカーって言いたい?でも、人をホントに好きになったら、みんなストーカーになると思う。違いは、それが、相手を不快にさせるか、どうかの違いだけだと思う」
「でも、どんなに見てたって、僕の心の中までは、見えないでしょう」
「見えるよ。人の言動っていうのは、心を映し出してるものなんだから。田中くん、谷口さんも好みでしょう?」
倉田さんの観察力は、とにかくずごい、の一言に尽きる。
僕が、何も言えなくなって、黙っていると、
「ねぇ、今日、泊まってくよね? パジャマ買っておいたけど、歯ブラシ忘れちゃった。 私のでいいよね?」
正直なところ、ちょっと怖さも感じたけれど、僕は黙って頷いて、少し煮詰まって、味が濃くなったすき焼きをつつき始めた。
お風呂から上がって、二人でベッドに横になると、倉田さんは、自分からパジャマを脱いで、次に、僕を裸にすると、優しく口づけをして、僕のジュニアを柔らかく手で包んでくれた。
倉田さんの細い指で、にぎにぎされるだけで、僕のは痛いほどに怒張し、ゴムを被せてもらうと、倉田さんに導かれて、一気に根元まで入っていった。
入った瞬間、倉田さんはしっかりと僕の首に抱きついて、離れようとしなかったが、暫くすると動くよう促されて、動くと、あっという間に果ててしまった。
ゴムを始末しようと、ティッシュで包むと血がついていた。
僕は、自分の血かと思って、一瞬焦ったが、そうではなかった。
驚いたことに、倉田さんは、初めてだった。
「今日は、ナプキンしとくね」
倉田さんは、ショーツを履きながらそういうと、お互いにパジャマの上だけを着て、抱き合って眠った。
翌朝、目を覚ますと、倉田さんはもう起きていて、朝食の用意をしていた。
「おはよう・・・、ございます」
「あ、起きた? 朝ごはん直ぐにできるから、顔でも洗ってて」
そこには、いつもの倉田さんでありながら、僕たち二人の朝食を作る倉田さんが居た。
「だらしないお付き合いは、いやなの」
僕たちの交際は、こうして始まったが、倉田さんには、最初にそういわれた。
「平日は、学生の本分を全うして、週末は、一緒に過ごしましょう」
僕は、倉田さんのことが好きだったし、憧れの人でもあった。
人として、尊敬もしていた。
だから、倉田さんに嫌われたくなくて、忠実にそれを守るようにした。
周りに付き合っていることが、ばれないようにするのかと思っていたら、そうではなくて、駅で会えば、腕を組んでくるし、食堂でひとりで食べていると、僕のところにやってきて、一緒にご飯を食べた。
友達にも僕のことを彼氏だと公言して憚らないようだった。
週末は、倉田さんと過ごしたいので、平日は、勉強とバイトをどれだけ効率的にやるかに励み、いつも週末がくるのが、待ち遠しかった。
最初は、とてもおとなしいセックスだったが、お互いにだんだん慣れてくると、かけがえのない愛の儀式になっていった。
唇を合わせるだけの口づけから、舌を絡め合って、吸い合うディープキスに変わり、倉田さんを何度も絶頂に導くまで、僕は漏らさないでいられるように
なってきた。
「田中くん、そこっ! あぁ、いい! あ、あ、あ、あ、イク、イク、イッちゃうー!」
倉田さんは、僕の指で、唇で悶え、肉棒を受け止めては、登りつめた。
そして、僕たちは抱き合って、ぐっすり眠った。
全てが幸せだった。あの日までは。
2: 投稿者:田中 投稿日:2013/09/14 14:11:47
倉田さんからは、本当にいろいろな影響を受けた。
「田中くん、いざという時のために一着は、ビシッと決まったスーツを用意しておくんだよ」
「二十歳を過ぎたら、自○党だね」
「浮気するなら、絶対に知られないようにするのが、エチケットだよ」
倉田さんの下宿で会うのは、週末に限っていたけれど、学校では毎日のように顔を合わせていたし、長い休みの時は、いろんな所へ行った。
初めてディズニーランドへ行ったのも、USJに行ったのも、倉田さんとだった。
最初の内は、夜行列車に乗って、北海道まで行くのが二人の大旅行だったけど、そのうち、上海の屋台で一緒に買い食いをして、猛烈な下痢に見舞われたり、ロンドンのB&Bで一緒に泊まったりもした。
倉田さんは、美術館が好きで、
「私、フランドル画家が好きなんだ」
「フランダース?」
「フランドル。 フェルメールとか知らない?」
フェルメールくらい知っているさ、と一人ごちたが、絵は何一つ思い浮かばなかった。
後でこっそり調べて、ふぅんと思ったりした。
何もかもが充実していて、楽しかった。
僕が3年生になった時、倉田さんは、卒業して、OLになった。
どんなに忙しくても、週末は、僕との時間を優先してくれた。
そんな中、学校で、由香という1年生と知り合った。
由香は、タイトスカートにピンヒールがトレードマークみたいな子だったけど、倉田さんとは違った魅力を持った女性だった。
後でわかったことだけど、あの谷口さんの妹だった。
倉田さんのお蔭で、ちょっとだけ良くなった見栄えと、3年生という先輩の雰囲気につられたのか、由香は、しきりに僕にちょっかいを出してきた。
「せんぱぁい、帰りにご飯して帰りましょうよ」
「先輩の好きな女の子って、どんなタイプですか?」
「今度、祇園祭、見に行きましょうよ」
由香を倉田さんより好きだと思ったことはないけれど、京都の帰り、僕は由香とホテルに泊まってしまった。
部屋に入るなり、由香は僕に抱きついてきて、唇を合わせると、舌をぬるりと絡ませてきた。
一緒にシャワーを浴びて、絡み合うようにベッドに倒れこむと、僕は由香の小ぶりだが形のいい乳房を吸った。
キスをしながら、由香の乳首を弄び、やがて細い太ももの間に指を滑り込ませてみると、由香は既に陰毛を自らの愛液で濡らしていた。
亀裂に沿って中指を這わせ、すこしずつ肉の襞を掻き分けて、中指に少し力を入れて折り曲げると、するっと中に吸い込まれた。
「ああーっ」
由香が悩ましげに悶え、それに触発されたかのように僕は指をクリに移し、優しく揉んだ。
由香の体がびくっと震え僕に抱きつこうとする。
そのまま、ゆっくりと由香の肉芽を指で捏ねるように刺激し、やがて速度を速めていった。
「せんぱぁい、すごい、すごい、ん、ん、ん、あー、いっちゃう、いっちゃう、いっちゃうーぅ!」
由香は一層強く僕にだきついたかと思うと、身体を震わせて最初の絶頂を迎えた。
腰を引いて刺激からのがれようとするのを指が追いかけ、そのまま中指を押し込み、由香の少しざらついたところを指の腹で擦った。
「せんぱい、だめん!」
僕の手首を掴んで動きを制しようとするが、僕はそれを許さない。
薬指にも応援をさせて、由香の中をかき回し続けると、僕の手を股が挟み込むように力が入り、
「あん・・・、あ、あ、あ・・・、ソコ・・・、あー、そこ・・・、先輩・・・」
と言って、お腹に力を入れて、上体を起こそうとする。
そこで、一旦、由香を横たわらせて、覆い被さると、舌を絡め取って、吸ったり軽く噛んだりして、顎から喉、胸の間を通って鳩尾、臍へと舌を這わせたあと、両足を割って広げさせ、尖らせた舌で亀裂に沿ってなぞった。
舌がクリに近づくだびに、由香は、あーっ、と切ない声を上げ、舌先でクリの皮をめくるようにして刺激を与えたあと、口に含んで吸うと、由香は腰をくねらせて、悶えた。
すかさず、僕は膣内に指を滑り込ませて、中とクリを同時に攻めると、由香は、乳首を固く立たせながら、
「あ、あ、あ、あ、あーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
と細く長い、うめき声をあげると身体をのけ反らせて、イッた。
目を閉じ、余韻に浸る由香の上半身を抱き起し、膝立ちになって、怒張したものを由香の目の前に突きつけるとと、由香は、うつろな目をしながら、のろのろとそれに舌を這わせ、口に含むと、ゆっくりと首を前後に動かし始めた。
倉田さんとは比べものにならない、拙いフェラだったが、一生懸命に奉仕しようとする姿に興奮し、ゆっくりと由香を仰向けに寝かすと一気に貫いた。
入った瞬間、由香は、うっ、と声を漏らし、イヤイヤをするように首を横に振るが、最初は浅く、徐々に深く早く奥を突くと、あっという間に登りつめ、身体を痙攣させた。
はぁ、はぁと肩で息をする由香のくびれた腰を引き寄せるようにして、激しく突き続けると、由香は再び反り返り、少し遅れて、僕も限界を迎え、由香の平らなお腹に放出すると、二人で抱き合って朝まで眠った。
目を覚ますと、由香が横でうつ伏せのまま、僕の顔をじっと見つめていた。
「先輩の寝顔って、かわいい・・・、ねぇ、あたし、もう先輩の女ですよね?」
「ん」
曖昧な返事をして、僕は目を閉じると、もう一眠りしてから、由香を家まで送って行った。
「明日の土曜日も会えますか?」
別れ際に、由香が問いかけるが、
「ゴメン、明日は、用事があるんだ」
そう言って、その日は別れた。
土曜日は、倉田さんと過ごす時間だ。
美味しいパスタを食べさせるお店で、昼食を済ませて、二人で僕の下宿に向かった。
住み慣れたボロアパートに入ろうとした時、人の気配がした。
後ろからシャツの裾を引っ張られ、振り返ると、そこには由香が立っていた。
由香は目にいっぱい涙を溜めて、
「先輩、今日の用事って、デートだったんですね?」
僕は、倉田さんの顔を見て、狼狽えながら、何とか言い訳をしようとしていると、
「きちんと話をしてあげなよ。終わったら、連絡して。」
というと、倉田さんはスタスタと帰っていった。
由香を家に上げるわけにもいかず、近所のファミレスに入って、倉田さんとのことを話した。
僕が1年生の時から付き合っていること。由香のことは魅力的な女性だとは思っているが、倉田さんとは別れる気がないこと。いい加減なことをした自分を恥じ、由香には申し訳なく思っていることなどを、一方的だったけど、告げた。
由香は黙って聞いていたが、最後には涙を拭いて、
「先輩、あたしは、一度でも嬉しかったです。」
「・・・」
「でも、倉田さん、大丈夫かな・・・。大事にしてあげてくださいね」
由香は、それだけ言うと、姿勢を正して、僕なんかに頭を下げ、ファミレスを出て行った。
由香には、申し訳ない気持ちで一杯だったけど、僕はその場で、倉田さんに電話を掛けた。
倉田さんは、ワンコールで電話に出てくれて、
「田中くん? 終わった? 早かったね」
「倉田さん、今からそっちへ行っていい?」
「んー・・・今日は、一人にしておいてくれないかな・・・」
「ねぇ、どうしても、ダメかな?」
「うん・・・、明日にしよう? 明日、田中くんちにいくから・・・」
そういうと、僕の返事を待たずに、電話は切れた。
僕は、その日、悶々とし、下半身の暴走を止められなかった自分を悔いたが、明日を待つしかなかった。
翌朝早く、倉田さんは、やってきた。
珍しく、髪をひっつめにして、フレアスカートに真っ白なブラウス姿だった。
手にバスケットを下げて、中には僕の好物のサンドイッチと紅茶を詰めた魔法瓶が入っていた。
「田中くん、朝ご飯食べた?」
サンドイッチを並べて、紅茶を入れてくれている倉田さんの顔をまともに見られずに、力なく、僕は首を横に振った。
「倉田さん、ゴメン・・・なさい」
サンドイッチには手を伸ばせないまま、僕は倉田さんにそう言うしかなかった。
「すごく、きれいな娘だったね・・・。やっちゃった?」
「ごめん、ホントに、ゴメン。 でも、誓って、一度だけなんだ」
「・・・」
倉田さんは、大きくため息を吐くと、みるみる目に涙が溜まっていった。
「田中くん、ずるいよ。正直であることで、田中くんは、気持ちが楽になるかもしれないけど、いま、田中くんは私を地獄に突き落としたんだよ」
「・・・」
「どうして、何もなかった、って言えないかなぁ。 どうして、ホントのこと、言っちゃうかなぁ」
「・・・」
「田中くんが、何もないって言えば、私の中では何もなかったって思えるんだよ。それが、女なんだよ!。 エチケットだって、言ったじゃん・・・」
それっきり、倉田さんは何も言わなくなってしまった。
長い沈黙に耐えられなくなって、
「ゴメン、もう二度としませんので、許してください」
「・・・」
「僕のこと嫌いになっちゃった?」
倉田さんは、キッと僕を睨むように視線を向けると、
「嫌いになれないから、苦しいんじゃない! あんたなんか大嫌い、って言えたら、どんなに・・・」
僕は、何も言えなくて、黙ってうな垂れていると、
「バイバイだね・・・」
そういって、空になったバスケットを手にして、倉田さんは立ち上がった。
僕は、倉田さんを背後から抱きしめて、子供のように駄々をこねた。
「倉田さん、待って・・・、お願い・・・します、行っちゃ、いやだ・・・、何でもします!」
何も言わずに出て行こうとする倉田さんを、そのまま帰すわけにはいかなかった。
帰したら、そこですべてが終わってしまう。
言葉で倉田さんを説得できない卑劣な僕は、倉田さんをその場に押し倒し、ブラウスを引きちぎるように左右に引っ張ると、ボタンが弾け飛んだ。
倉田さんは、抵抗もせず、ただ顔を背けて泣いていた。
そんな倉田さんに構わず、僕は、服を脱ぎ捨て、倉田さんの下着を剥ぎ取ると、ゴムもつけずに挿入した。
倉田さんとケンカをしたときエッチで仲直りをすることもあったので、僕には、それしか思い浮かばなかった。
思考が停止しつつも、倉田さんを失うくらいなら、いっそのこと、死んでしまいたいと思いながら腰を振った。
あの時、倉田さんが僕を受け入れてくれなかったら、僕は本当に死んでしまっていたのだろうか。
身勝手だけど、子供の僕は、感情でそうなってしまっていたかもしれない。
僕にはわからないけど、倉田さんにはそれが、わかっていたのかもしれない。
わからないけど、あの時、倉田さんには、僕の子が宿った。
娘は、中学生になった。
妻は、娘にいつも、お父さんのことが好きで好きでたまらない、と言って憚らないので、お父さんは、いつも母と娘の取り合いだ。
娘はとても素直に育ち、母親に似て少し理屈っぽい。
そして、僕は、今でも妻には頭が上がらない。でも、死ぬまで一緒にいたい。
この年になって口に出すのも恥ずかしいが、僕は妻を、とても愛している。
まだ、許してはくれていないと思うけれど、とても感謝している。
3: 投稿者:田中 投稿日:2013/09/19 20:58:45
倉田さんは、あの日、僕のワイシャツを身に纏うと、何も言わずに帰って行った。
全てが終わった。そう思うと、自分のことがイヤでイヤでたまらなかった。
由香に悪いことをしたと思っていたが、その後悔よりも、耐えられないのは、倉田さんに軽蔑されてしまったことだった。
倉田さんを失う日が来るなんて、想像すらしていないくらい、僕は、甘やかされ、いい気になって、勘違いをしていた。
倉田さんのことを想うと胸が苦しくて、馬鹿な自分が悔しくて、僕は、枕に顔を押しつけ、ベッドの上を転げまわって、呻き散らした。
子供のように泣き疲れて、夜中まで眠ってしまった。
ふと気がつくと、携帯にメールが入っている。・・・倉田さんだ!
慌てて、メールを開いてみると、『明日の心理学II、遅れないでね』とだけ入ってる。
明日の1限目の授業だ。
倉田さんは、普段からも謎掛けが多くて、ミステリアスな部分が魅力なのだけれど、僕は、こんなメール一通で、心が躍り、目覚ましを二つセットすると、全身から力が抜けて、深い眠りに落ちた。
翌日の学校帰り、僕は、倉田さんに『会いたい』とメールを送った。
電話など、とても掛けられる心境ではなかった。
しかし、無情にも倉田さんからの返信はなかった。
僕は、がっかりしたが、もう一度メールを送る勇気はなくて、今日こそは、返事が来るかと期待して、毎日学校帰りに一通だけ、メールを送った。
それでも、倉田さんからの返事はなく、かと言って、倉田さんのアパートに向かう勇気もない、意気地なしだった。
僕は、苦しくて、毎晩、下宿でのた打ち回った。
金曜の夜、倉田さんから、やっと一通のメールが届いた。
『ハンコを持って、明日、家に来て』
何時に、という時間指定もないので、訊こうかどうしようか迷ったが、ひと言、『了解』とだけ、返信した。
送ったあと、何時に行くか、僕が指定すればよかった、と後悔したが、もう一度、メールを送る勇気はなかった。
メールをもらった途端に、嘘のように、苦しみから解放された。
もう、浮気はしません、と誓約書を書かされのだと思っていたが、馬鹿みたいにウキウキしている自分がいた。
取り敢えず、朝の7時に目覚ましをセットしておいたけれど、目覚ましが鳴る前に、目は覚めて、どうしようか迷ったけど、顔を洗って、そのまま倉田さん家に向かった。
合いカギは、持っていたけれど、勝手に鍵を開けて入るのが、憚られて、他人行儀にチャイムを鳴らすと、奥から『空いてるわよ』といつもの倉田さんの声が聞こえた。
「・・・おじゃましまぁーす」
そう言って、上り込み、キッチンを覗くと、倉田さんが忙しそうに動き回っていた。
「もうできるから、テーブルについていて」
そう言われて、僕は、そうさせてもらった。
「田中くん、目覚ましより早く起きたでしょう?」
「うん」
「10分くらい?」
「うん」
「うーん、惜しかったなぁ。」
倉田さんは、僕の行動を読んで、サプライズを仕掛けるのが得意で、今日もそれを狙っていたらしい。
5分も待たずに、僕の前に、サンドイッチと紅茶が並べられ、倉田さんがいつものように向かいに座って、朝食が始まった。
倉田さんは、その週に会社であった話をしていたが、半分くらい、食べたところで、僕は居住まいを正し、伏し目がちに、
「倉田さん、ごめ・・・」
と言いかけると、被せるようにして、
「ハンコ、持ってきた?」
と訊いた。
「え?」
「だから、ハンコ。 メールに書いたよね?」
「あ、うん・・・、持ってきたけど・・・」
倉田さんは、茶封筒を取り出して、中から一枚の紙を取り出すと、僕の前に置いた。
婚姻届だった。
倉田さんの方は既に埋まっていて、保証人欄には、僕の知らない(たぶん)会社の人の名前が書いてあった。
非常識とか、手順とか、考えている余裕はなかった。
倉田さんを失いたくない。その一心で、僕は自分の方の記入欄を埋めると、朱肉が差し出された。
迷わず、ハンコをトントンして、紙に押し付けると、ゆっくりと持ち上げて、印鑑を確かめた。
押し慣れていない割には、悪くない印影だった。
「田中くん、私、本気だよ。その紙、私に渡したら、直ぐに役所に出しちゃうよ」
僕は、黙って頷きながら、倉田さんに紙を差し出した。
倉田さんは、口をきゅっと結んで、両手でそれを表彰状のように受け取ると、茶封筒にしまい、いつでも僕の手が届くところに置いた。
それからは、いつもの週末の倉田さんで、僕たちはベッドで裸になり、二人が疲れて眠るまで、いつまでも求め合った。
「田中くん、そこ・・・。 そう・・・、あ、だめ・・・、ん、ん、ん・・・、ああーっ!」
倉田さんは、余韻に浸りながら、僕の耳元で囁いた。
「あのブラウス、高かったんだから」
僕は、愚息共ども、うな垂れた。
倉田さんとは、あれから一度もあの時の話をしていない。
でも、すべてが水に流されて、許されてはいないのだと思う。
あの日僕が引き裂いたナラ・カミーチェのブラウスが、繕われることもなく、そのまま、今でもタンスの奥にしまわれている。
でも、妻は優しく、僕が会社でそこそこ上手くやっているのも、全て内助の功のお蔭だと思っている。
身勝手で、どうしようもない僕が、わがままついでに、もう一つだけ、切に願っているのは、倉田さんより先に逝くことだ。
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